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「スタートアップを通じて社会にインパクトを生みたい」橋本翔太

今回は、企業とユーザーをつなげ、顧客体験を最適化するコミュニティタッチツール「commmune(コミューン)」の開発、運営を行うコミューン株式会社の共同創業者であり、代表取締役COOを務める橋本翔太さんにお話を伺いました。

 

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橋本翔太 コミューン株式会社共同創業者 / 代表取締役COO

プロフィール:ストックホルム経済大学留学を経て、東京大学経済学部卒業。卒業後Google Japanに入社し、マーケティング業務に従事した後、アメリカ本社に転籍。広告製品の新規顧客ダイレクトマーケティングをリード。退職後帰国し、コミューン株式会社を共同創業。

 

【やりたいことを見つけるために決意したスウェーデン留学】

 

━まずは大学生のときのお話を伺いたいと思います。大学4年時に留学されたそうですが、なぜ留学しようと思ったのですか?

 

橋本:大学の交換留学制度で、4年生の8月から6ヶ月間スウェーデンに留学しました。期間的にも短いですし、大学の単位も全部取り終わっていたので、かなり楽しい留学生活でした。留学を決めた理由の一つは、純粋に海外に行ってみたいという気持ちです。父親の仕事の都合で幼い頃にドイツに住んでいましたし、高校時代にも二週間くらい行ったことはあったのですが、一人で別の国や地域に行って様々な体験がしたい、という思いがありました。

 

橋本:留学先の選択肢はスウェーデンストックホルムか、フランスのパリしかなかったのですが、最初は「みんながパリに行くなら、自分はスウェーデンにしよう」という感じで決めました。でも実際にスウェーデンについて色々調べると、日本に限りなく近いところがある一方で、福祉国家と言われているように、独自の価値観を重視して社会を形成している面もあると知り、スウェーデンで学ぶことで日本を相対的に見るのも面白そうだと思って留学を決めました。

 

━留学を決意した当時は、何かその先の夢を抱いていましたか?

 

橋本:全然明確には抱いてなくて、漠然としていました。ただ、近くの環境だけ見ていてもやりたいことが見つからないと思ったので、外に出て新しい価値観に触れ、いろいろな選択肢を得るために留学しました。

 

━留学先で感じた日本との違いは、橋本さんの価値観にどんな影響を与えましたか?

 

橋本:具体的な違いは挙げればたくさんありますが、そもそも違いがあることを再認識できたことが学びだったと思います。スウェーデンに留学中、ヨーロッパ旅行もしていましたが、国ごとに前提が違うし、人や言語も違う。でもそれはただ価値観が違うだけで、その中でどれが正しいということはなく、自分自身もその違いの一部でしかない。このことに気づかされたこと自体が一つの学びであり、今でも根底にある価値観の一つかもしれません。

 

Googleに入社後様々な壁を乗り越え、起業を目指すように】

 

━なぜGoogleを就職先に選んだのですか?

 

橋本:Googleを選んだ理由は色々ありますが、一つはインターネットのトップランナーであり、新しい取り組みや仕組み作りに携われるという点です。もう一つはグローバルに展開していて、世界中にいるメンバーと協業でき、色々な環境に身を投じられるという点で、自分自身にとって刺激的で、先進的な情報に触れられるだろうと思って選びました。

 

━入社後3年間は日本オフィスに勤め、その後アメリカの本社でも働いていたそうですが、どんな4年間でしたか?

 

橋本:そうですね、すごく楽しかったです。チャレンジングな環境を提供してもらえたこともあり、業務で新しい挑戦をすることもできましたし、その後海外に行く機会を得ることもできました。さらに、業務とは関係ない別のプロジェクトに関わったり、スタートアップの支援をして、スポンサーとして色々なスタートアップのイベントに行ったりもしました。自由な土台があったからこそ、さらにGoogleという下駄も履いて、色々な人に会うことができましたし、なかなか経験し得ないことも経験することができました。

 

Googleに勤めていた4年間の中で、どういった山や壁に直面しましたか?

 

橋本:そうですね、日本とアメリカ両方での経験を合わせると、大きなものは3つあります。
一つ目は自分でドライブしていくことの難しさ。Googleはいい意味でも悪い意味でもいろいろなことに対して寛容ですし、自律的に動いていくことが求められるので、自分が何もしないでいれば何も得られません。最初はそんな環境に対して戸惑いがありましたし、自分でどこまでやっていいのかが分からず苦労しました。

 

橋本:二つ目は色々なチームやファンクション、国などの枠組みを超えることの難しさです。マーケティングチームで他のチームと一緒にプロジェクトをするとき、いかにしてそれぞれの目的を合わせてやっていくかということに苦労しました。新しい売り方や新しい切り口をGoogleから出していくために、何十年もその業界でやってきたような人とぶつからないといけない場面もあり、なぜうまくいかないのか、なぜこれを伝えられないのか、といった葛藤はすごくありました。

 

橋本:三つ目はグローバルコミュニケーションの難しさです。それまで日本の中だけでやっていたのに対し、USに行ってからはメキシコのチームとやりとりをしたり、NYに行って企業のイベントをしたりすることがあったので、英語でのコミュニケーションの難しさに加え、今までと違う環境で自分の意図を伝え、他の人と目的を共通にして何かを達成していくことの難しさがありました。

 

━たくさんの壁を乗り越えてきたんですね。起業はいつ頃から考えていたんですか?

 

橋本:大学一、二年生の時に東大起業サークルTNKというサークルで活動していましたが、その時点では自分が起業したいというよりは、高校までで起業というものに触れたことがなかったので、起業やそのカルチャーに興味を持った段階でした。

 

橋本:Googleの同期のなかには起業したり、スタートアップにジョインしたりするメンバーが結構いました。最初の一年でも五人くらいはそういった環境の変化を求めている人がいましたね。また、アメリカにいた時は週3回はサンフランシスコ支社、残りはシリコンバレーのMTV本社にに通っていました。そこでスタートアップのメンバーたちが社会に対してインパクトを生もうと挑戦しているのを見て刺激的を受けて、自分もそこを目指したいという風に方向性が固まりました。

 

【相乗効果を発揮できるパートナー、高田さんとの出会い】

 

それで起業されたんですね。共同創業者の高田さんとは、どんな経緯で一緒に起業することになったのでしょうか?

 

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橋本:他に選択肢がなかったからですね。嘘です(笑)。綺麗な理由は特にありませんが、高田が自分とは違う視点を持っていて、自分ができないことをできる人だったからだと思います。ビジネスアイディアの話をしていただけでなく、飲み会をしたり、Googleでランチに来て何もせず過ごしたり、一緒に旅行に行ったりする中でどういう価値観を持ってる人間なのかわかっていたし、自分とは違う視点で話す高田との議論が面白いと感じてました。だから、起業して社会に何か生みたいって考えた時に、一緒にやることで相乗効果があるだろうなと思ったんです。

 

━途中でサプリメント事業からピボットしていますが、その際に諦めようと思ったことはありませんでしたか?

 

橋本:あまりなかったと思います。そもそもスタートアップは一番最初に決めたものがそのまま伸びることの方が珍しくて、紆余曲折を経てたどり着くというのがよくあるケースだと思っていたので、ある意味健全というか、想定されるものだとは思いました。それに、スタートアップはチーム作りやどんなカルチャーにするかが多分に影響を与えます。高田とCTOの山本とやっていくという土台の上に、事業がのっているというイメージだったので、別の事業に変わるからと言って「じゃあ別のサプリ会社行くわ」とはなりませんでした。

 

【周りに遠慮せず自分が良いと思うことを言える環境が目的に達する組織を作る】

 

━今までのお話の中にもチームという言葉が何度か出てきましたが、橋本さんにとっての理想のチームの形はありますか?また、その理想の形をどうやってコミューンで体現されているのでしょうか?

 

橋本:私も運用しながらいろいろなことを学んでいる最中ですが、会社が目的ありきで作られている組織である以上、目的や目標がどれだけ浸透しているかが重要だと思います。全体の思想や目指すべき方向性が合致していて、それぞれが原則に則って自律的に動いていくことができれば、組織がやることやメンバーが変わったとしても機動力が落ちない、理想的な組織になると思います。

 

橋本:また、メンバー同士がこれを言ったら嫌われるんじゃないか、などと不安になる必要なく議論でき、アクションできる場である必要があると思います。今言われてる心理的安全性という言葉になるかと思いますが、職種・職歴・経験関係なく自分が良いと思うことを言える環境が、目的に達する組織を作る上では重要だと思います。そして、そのような環境を作るためには、言い合うことが奨励され、言い合うことによってその人の過去や人格、考え方を否定しているのではなく、あくまで目的を達成するために言っているのだという共通認識を持つことが必要だと思います。

 

━学生の中でも起業する人や学生団体を立ち上げる人が増えていますが、そのような学生に向けてチームビルディングについてのアドバイスはありますか?

 

橋本:同じチームにいても、そのプロジェクトに参加してどうなりたいかの前提はみんな違うと思います。だから、組織としての目的を考えるのもそうだし、一人一人がなぜそこにいるのか、何がしたいのかを腹を割って話すようにしないと、途中で脱退したり齟齬が生まれたりすると思います。もちろん最初の時点ではそんなに強い思いがないとか、言語化できないとかはあるかもしれませんが、みんなでそれらを考えたり、定期的に共有したりすることで、プロジェクトをやっていく上でみんなが常に立ち帰れる場所を作ることが重要かなと思います。そこまでが大変ではありますが。

 

【未来を信じて今やれることを】

 

コロナウイルスの感染拡大で事業への影響はありましたか?

 

橋本:ありますね。会社の事業自体への影響もありますし、会社のメンバーや取引しているお客様にもあると思います。オンラインへのシフトの必要性が高まった今、我々の果たすべき社会的な役割がコロナ前とは変わったというか、より研ぎ澄まされたものになっていると思います。オンラインへのシフトに貢献していくと共に、企業の生産性を上げ、ユーザーさんが本当に困っていることを解決していきたいと思っています。

 

━コロナ禍の今の大学生に向けてアドバイスをいただけますか?

 

橋本:「止まない雨はない」と捉える方がいいと思います。いいというか、しょうがないですよね...。家で一人でオンライン授業受けていて、「ずっとこれが続いていくのか」、「未来もこんなものなんだ」と思ってしまうかもしれないですが、今の状況がずっと続いていくのではないという希望を持ってほしいです。間接的ではありますが、私たちは社会がオンラインでつながることを促進していきますし、もし我々の体験とか話が少しでも「あ、そういうふうなこともできるんだ」とか「やってみたいな」というふうに思うことにつながるのであれば、すごく嬉しいなと思います。

 

━最後に、今後の橋本さんの将来図を聞かせていただけますか?

 

橋本:個人的な話だと、健康が第一ですね。これは私自身だけでなく、家族や友達、会社のメンバー、取引先やその家族にはやっぱり健康で過ごしてほしいし、健康が維持されるような社会作りをしないといけないなと思います。また、こういう社会になると不安定になったり悲観的になったりしがちですが、私はスタートアップを経営している立場なので、世の中の問題を今の会社を通じて解決したいです。会社に限らず、私の働きかけによってそういう問題を少しでも解決できるようにしていかないといけないし、できるように精進したいなと思います。あとは、楽しく過ごしていくのが大事なので、私自身も色々制限があったりきついなと思ったりすることもありますが、どう楽しく過ごせるかを思い描きながらやっていきたいと思います。楽しく過ごせるように皆さんも頑張ってください。

 

 

ありがとうございました!