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「世界中のグローバル人材と日本企業をつなぐ」唐橋宗三 -後編-

「世界中のグローバル人材と日本企業をつなぐ」唐橋宗三 -前編-前編の続きとして、“Global People make Global Companies, Society”「テクノロジーで世界中のヒトと会社、社会をボーダーレスに」をミッションに掲げる、株式会社SPeakの代表取締役を務める唐橋宗三さんにお話を伺いました。

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唐橋宗三 株式会社SPeak(スピーク)代表取締役CEO

プロフィール:2001年に単身渡米し、バーモント州・ニューヨーク中心部で8年間を過ごし、世界中の優秀な若者のダイバーシティの可能性を感じる。外国人として過ごした異国での生活、日英バイリンガル最大級ジョブフェア・ボストンキャリアフォーラムの運営経験、日系グローバル企業・社会人学生生活の中で企業側・多くの学生側の課題や現状や可能性を感じ(株)SPeak立ち上げに至る。

 

【就職、退職、そして大学院へ】

 

━それで、大学卒業後はダイキンに就職されたんですね。日本企業で働く中で、アメリカでの生活とのギャップはありましたか?

 

唐橋:アメリカの企業では働いてないのでそこの比較はできないのですが、そんなにギャップは感じませんでした。ダイキンはグローバルな企業だけど、M&Aで大きくなった海外展開が基本で、オーガニックで伸びている地域っていうのは中国とか欧州ぐらいだったので、そんなに社内はグローバルにはなってないだろうと思っていましたし、日本人が多かったので、ある程度礼儀作法的なものは求められるだろうと思って入ったら実際そうだったので、ある程度思った通りでした。

 

━では、6年間でダイキンを辞めた理由はどのようなところにあったのでしょうか?

 

唐橋:会社として何も文句はないし、素晴らしい働き方をさせてもらっていました。ただ、僕自身がもっとチャレンジをできる環境を求めていたので、6年でやめさせていただいたんです。どの会社に務めるかということは、個々人に合う会社、合わない会社があると思いますし、初めの2年間は良かったけどあとの4年間は…みたいなこともあると思います。僕の場合は、ダイキンでできる成長とは違う種類の成長をしたかった、ということです。

 

━退職後は慶應義塾大学大学院でMBAを取得されたそうですが、MBA時代の経験はその後の起業にどのように影響していますか?

 

唐橋:MBAケーススタディが多かったのですが、それにはかなり本気で取り組みましたね。夜中まで1人でやって、その次の日の朝のグループディスカッションで少なくとも僕は積極的に発言して。MBAに関して勉強のことだけでいえば、一つの企業のことに没頭していたことは良い影響を与えていると思います。また、修士論文を書く際には自由にフィールドリサーチができるゼミを選び、グローバル人材と中小企業をどうやったらマッチングできるかについて、全国6000社くらいの中小企業にアンケートを取ったり、中小企業の経営者や大手企業の人事部の方とお話ししたりしました。

 

唐橋:そして、当時グローバル人材の定義について考えていた時に、日本人のハーフの子や日本にいる留学生に会いに行っていたんですが、その時に出会ったマークという留学生が今の事業には大きく影響しています。彼は日本語・英語が話せて、アメリカのヴァンダービルド大学という有名大学でエンジニアリングを勉強して、日本では慶應理工学部に通っていたんですが、就活というものをよく知らなかったがために、勉強だけしていたらすごく就活が遅れてしまったんです。結局彼は中小企業に勤めたんですけど、一年半くらいで辞めちゃって精神的にも病んでしまい、マレーシアに戻ってしまった。それにすごく腹が立ったんです。もうちょっと早く始めとけよ、というマークに対する思いもあったんですが、でもそれって日本の常識を押し付けようとしているんじゃないかと思って。

 

【過去の失敗から学び、1人でゼロから始めた起業】

 

━中小企業での新規事業を経て、SPeakの立ち上げに至ったとのことですが、起業を考え始めたのはいつ頃でしたか?

 

唐橋:MBAを卒業する前くらいですね。その当時50個くらいあった事業のアイデアを3つくらいに絞り、これで試してみたいと思ったんです。なるべく失敗のリスクを減らしたかったので、親父が経営する中小企業でテストプロダクトなどを出させてもらいました。でも、この事業でいけるかもと思ったのは、お客さんと話してからですね。16社くらいのクライアントを中小企業時代に持っていて、お客さんやユーザーと話したり、実際にプロダクトを使ってもらったりする中で事業に確信が持てるようになりました。

 

━起業する上でどのような苦労や挫折がありましたか?

 

唐橋:TED Talkで挙げられている起業の成功要因として、タイミング、チーム・エクセキューション、アイデア、ビジネスモデル、お金、この五つがあるらしいんですが、初期に僕が失敗したのはチーム・エクセキューション。2018年の12月くらい、中小企業でテストリリースをしたあとくらいのときですね。当時はクライアントが16社くらいいて、学生会員も500〜600人くらいの就活生がいて、プロダクトも一応テスト段階ではありました。だからビジネスモデル的には全く問題なかったんですが、正直その時のチームは、僕がソロで始めて、人材紹介などで引っ張ってきてあまり納得しないまま採用してしまった人とかとやっていたんです。その背景には、会社のミッションやビジョン、バリューを正直僕自身も舐めていて、こんなおままごとみたいな言葉はいらないだろうと思っていたことがあります。今考えると、当時は会社の人や文化、自分のマネジメントスタイルが全然ダメで、自己満足的な経営になってしまっていました。

 

唐橋:その責任は自分にあると思い、去年起業してからは1人で始めたんです。テストプロダクトを終了して、今まで働いてくれていた人やクライアントとも関係性を切って、本当にゼロから始めました。そこから、人もミッションもビジョンもバリューも、自分のリーディングスタイルも全てガラッと変えましたね。

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現在の一部のSpeakメンバーとの集合写真

━起業のための資金調達も自ら行われたんですか?

 

唐橋:もちろんです。MBAの時はそもそも、投資家がどんな人なんだろうっていうのが分からなかったので、何人かの有名な方に会いに行っていました。実際に投資をしてもらうフェーズに入った時には、まずは知り合いから辿ろうと思ってMBAの同期で先に起業していた人に話をしたら、ちょうど今の投資家の人を紹介してくれて、ピッチさせていただいて投資を受けることになりました。

 

━SPeakの経営を行う上で何を大事にしていますか?

 

唐橋:月並みですが、失敗を経て、バリューの重要性を強く感じたので、バリューフィットは大事にしています。例えばバリューを体現しててスキルが低い人と、バリューは全然体現できてないがスキルが高い人、この二者のどちらかを取るとしたら、前者を取るという考え方はずっと大事にしてます。

 

【焦って起業は禁物。まずはやりたいことを形に】

 

━学生のうちに起業したいと考える学生も増えていると思いますが、そういう学生に対して何かアドバイスはありますか?

 

唐橋:学生起業に協力的なVCも増えてきているので、その種があればどんどんやった方が良いと思います。もし種が自分では確信が持てない、または今はまだ固まっていないのであれば、仲間を作るのが良いと思います。例えば大学時代の仲間でも良いですし、起業家志望の人が多い会社を就職先として選んで、そこでこいつとなら何かすごいことできるかもしれない、と思えるような人を見つけるのも良いと思います。僕はソロで起業しているので、今はチームがあるので結構助かってますが、最初はやっぱり大変でした。自分とは違う強みを持った仲間がいると、より起業しやすいと思います。

 

唐橋:また、焦って起業する必要はないと思いますが、本当にやりたいことがあって、これをまずトライアンドエラーしたいというのであれば、とりあえず団体をやるとか、何かをアウトプットするのはすごく良い方法だと思います。

 

ありがとうございました!