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「グローバルな視点で日本のスタートアップを支える」田村一真 -後編-

【休学して気づいた学問の実用性】

 

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━2018年のイベントを終えた後、大学を1年間休学したそうですね。

 

田村:2018年の4月から1年間休学していました。2017年にコアメンバーに加入して以来、学業と両立して活動していましたが、もともと一つの物事に深くのめり込むのが好きなタイプなので、もっとSlush Tokyoに集中したいと思って休学を決めました。

 

━休学期間はどんなことをしていましたか?

 

田村:他国のSlushイベントのシンガポール、上海や、海外のスタートアップイベントに参加したり、プロダクション担当としてデザイナーと協力しながら2019年2月のイベントを作るために活動したりしていました。

 

シンガポールのSlush団体も学生が運営していますが、日本の方と何か違いはありましたか?

 

田村:2018年の時はSlushを上海・シンガポールフィンランド・東京の4都市でやっていましたが、それぞれの都市が独立して活動していたので、それぞれの都市のチームに独自のカラーがありました。シンガポールではスタートアップがもっと学生に浸透していて、アジア市場の入り口として海外からも注目されていたので、日本とは全然環境が違ったし、学生が強い思いを持ってやっているのを感じました。

 

━休学を終えた時に何か心境の変化はありましたか?

 

田村:自分が今までSlush Tokyoでしてきた仕事が学問を通して見えるようになったので、勉強が面白くなりました。休学する前はそれがなんの役に立つのかも分からずに学んでいましたが、学問の実用性がわかったことで自分が学びたいことも明確になりました。

 

━最近は休学する学生も増えてきていますが、その人たちに向けてアドバイスはありますか?

 

田村:自分は休学中にやりたいことがはっきりと見えていたので、1年間貪欲に活動することができましたが、もしそれがないのであれば正直怖いですね。その日やることを全て自分が選択できるようになるので、自分のモチベーションやスケジュールの管理が重要です。休学中に何をやるのかを1ヶ月単位で具体的に考えておくと、有意義な時間になるのではないかと思います。

 

【世界にインパクトを与えるスタートアップが生まれる場所を日本にも】

 

━SlushからBARKに移行した経緯を教えてください。

 

田村:Slush Tokyoでは『Global Day One』などを信念に活動していました。また、言葉だけでなく自分たちも行動することを大切にしていたので、フィンランドから始まった既存のブランドのままやっていることに疑問を覚えました。そこで、Slush Tokyoが持つ信念を引継ぎつつ、日本からスタートアップを応援する団体を新しく作ろうと思い、リブランディングをしてBARKを設立しました。

 

━Slush TokyoとBARKにはどんな違いがありますか?

 

田村:Slush Tokyoではスタートアップに注力していたのに対してBARKでは、これは僕自身の考えでもありますが、アントレプレナーシップのマインドに注目しています。リブランディングをするにあたって、なぜSlush Tokyoを今までやってきたのか、なぜスタートアップが大切なのかを言語化しようとしたんです。そうしたら、スタートアップ自体も大切ですが、スタートアップのファウンダーが持つ思いや成し遂げようとしていることが大切なのだと気づいたんです。そこからマインドが重要だと考えるようになりました。

 

━新しく団体のビジョンやミッションを決めるのは難しかったと思いますが、そこはどのように乗り越えましたか?

 

田村:ビジョンやミッションに対してチームメンバーがそれぞれの観点を持っているので、その中から共通項を見つけるために、みんなが共感する記事や動画を共有したり、そこから出てきたキーワードを書き出して見比べたりして、半年くらいかけて構想しました。

 

一真さんにとってBARKの理想像はどんなものですか?

 

田村:もっともっと多様性に溢れた環境になるといいなと思います。日本人だけじゃなくいろいろな人が日本から起業して、そこから世界にインパクトを与えるようなスタートアップが生まれ、そして彼らがロールモデルとなってもっとたくさんのスタートアップが生まれる、そんな環境を作りたいですね。

 

━2020年2月に開催を予定していたBARKのイベントは中止になりましたが、そこにはどんな背景があったんですか?

 

田村:11月にリブランディングをして、イベントの開催が2月だったので、その短期間で参加してくださる人たちにベストなものを届けられるかを話し合い、やはり難しいと判断したので中止という決定をしました。

 

━中止の判断をするにあたり、チームの中で葛藤はありましたか?

 

田村:メンバーそれぞれの思いも、参加者である投資家・スタートアップ・学生など様々な視点からのものだったので、今までつくりあげてきたものを参加者へ届けたいという思いと、参加者にとってベストものを作りたいという思いが入り混じる中、みんなでよく話し合って決断しました。

 

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【コロナ禍の大学生に伝えたいこと】

 

━もし今大学一年生に戻るとしたら何をしますか?

 

田村:今自分が進んでる道と同じ道を進みたいんですけど、各出来事の時の自分の考えや感情を書き留めて置いて、それがどんな風に変化してきたのかをもっと研究したかったなと思います。

 

━自粛生活の過ごし方に関して何かアドバイスはありますか?

 

田村:全ての人が同じ環境になったからこそ、今何を思うのかをイベントに行っていろんな人と話して欲しいなと思います。これはイベントに限ったことではなく、人に会えないからこそオンラインでもたくさんの人とコミュニケーションをとった方が良いと思います。人と対話することでインスピレーションが得られるし、相手から何か聞かれてそれに答えることで、自分のことをもっとよく知る機会にもなります。

 

━最後に、同世代の若い人たちにメッセージをお願いします。

 

田村:日々、自分の行動に疑問を持って欲しいと思います。ゲームやYouTubeなど、日々の習慣になっていることが誰しもあると思うんですけど、それらを自分はなぜするのか、なぜ面白いと思うのかを立ち止まって考えてみると、そこから自分が本当に興味があることが見えてくるんじゃないかと思います。

 

 

田村さん、ありがとうございました!

 

取材 小楠 泰雅

文 井上 海南子

写真 田村さん提供

 

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