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「考え続けること、その姿勢が大事」小村隆祐 -後編-

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ここからは、小村さんのお仕事にテーマを移し、さらに深く聞いていきたいと思い
ます。まず、小村さんが組織開発や人材育成に携わる中で大事にしていることは何ですか?

 

小村:透明性を持って話すことです。人材育成や組織開発って、答えのないものをつくる商売であり、ナレッジワークだと思います。クライアントとのコラボレーションを通じて、新しい価値やプログラムをつくらないといけないので。だから、前提として信頼が必要なんです。この人が言っていることは本当だ、と相手に思ってもらって、一つのチームとして同じ方向を見るためには、常に誠実であり、正直である必要があると思います。

 

小村:あとは、勉強して学ぶことですね。今持ってるものだけでアウトプットを作ろうとしてしまいがちですが、アウトプットするためにはインプットが必要。例えば、どんなにいいシェフでも、良い材料がないとおいしい料理やより良い料理はできないですよね。それと一緒で、より良いアウトプットをするためにはより良い、またはより多いインプットが必要になるので、常に貪欲に学び続ける姿勢がすごく大切だと思います。 

 

より良いアウトプットにつながる、質の高いインプットとはどんなものだと思いますか? 

 

小村:ちゃんと真意を理解することです。例えば本も、そんなにいっぱい読む必要はありません。それより、真意を理解しようとしながら一行一行しっかり読む方が質の高いインプットになります。僕は本を読む時、作者の生まれた時代やどこの人なのかを押さえるようにしています。例えば、アメリカ一般、あるいはスティージョブズなんかはマインドフルネスやEQが大切と言ってるじゃないですか。あれは、もともとアメリカの社会がIQによりすぎていたから、それで東洋思想に注目してるんですよ。こういう背景を知らないと、彼が言っていることの真意は分からないですよね。アメリカの事例でアメリカ人が英語で書いた本を、そっくりそのまま日本人に適用するのは難しいです。だから、本の裏にある背景を踏まえて読み、咀嚼して落とし込む、そんな奥行きのある読書が必要だと思います。WHYの部分を理解していないと、再現性のある学びは得られません。

 

人材育成に失敗する団体と成功する団体にはどんな違いがありますか?

 

小村:わかりません!(笑)人材育成って失敗か成功か判断が難しいんですよね。そもそも失敗か成功かで測ること自体違うような気がします。

 

長期的な視点も必要ですし、難しいですよね。では、小村さんはどうやって人材育成の成果を測っていますか?

 

小村:ビジネスとしては、当初設定した狙いを達成できているかどうかで測ります。そのプログラム自体がリテンションしていくかどうかはやはり大切だと思っています。ただ、個人的には、育成っていう言葉はおこがましいと思っています。人は変えられないんですよ、他人なので。でも、人が変わる瞬間に立ち会えたら嬉しいですね。あとは、新たな一歩を踏み出す瞬間に立ち会えるのも嬉しい。自分の言葉や自分が提供したプログラムが、誰かが変わったり一歩踏み出したりするきっかけになる、というのは僕の理想の一つですね。

 

Thursday Gatheringで出会った人たちの中で、印象に残っている人にはどんな特徴がありますか?

 

小村:面白いなって思うのは、得てして自分の言葉で語ってる人です。どっかで聞いたフレーズをなぞるんじゃなくて、自分の言葉で生々しく語ってる人って面白いですよね。

 

小村さんはどんな価値を誰に届けたいですか?

 

小村:わかりません!(笑)ただ、みんなが躍動している社会を作るプロセスに絡めるといいなとは思っています。

 

自己実現をするために武器となる能力や資質とは何だと思いますか?

 

小村:繰り返しになってしまうんですが、一つは資本の蓄積だと思います。本を読んだり勉強したりするのはもちろん大切だし、お金も持っていると良い。でも、学生の人はお金はなかなかたまりにくいと思うから、どちらかというと知識・スキルをつけた方が良いと思います。できれば人と違うものを。あと、人脈も大切ですね。人的資本や社会関係資本、金融資本をちゃんと蓄積しておく、そして常に蓄積し続けることは、自己実現をするために重要なことだと思います。あと、自分自身の情熱も資本だから、自分のやりたいことを問い続けることも大切です。さっき言ったように、生々しい人であるほど、こいつ本当にやろうとしてるな、と感じさせる圧があって、それが他の人を動かすのだと思います。

 

小村:あと、理想主義が広く認知されてきている一方で、まだ今の日本社会には権威主義的なところがあります。ですがそこを否定せず、活用できるものは活用する姿勢も大切だと思っています。ときには肩書きやポジションをうまく活用することも大切なんです。

 

コロナの影響で社会の様々なところに変化が見られますが、小村さん自身は仕事やプライベートで何か変化がありましたか?

 

小村:あまり変わってないですね。Venture Cafeの活動がオンラインになりました。

 

コロナ禍で多くの大学生が悩んでると思いますが、もし小村さんが今の時期に大学生だったら、どのように時間を使ったと思いますか?

 

小村:難しいね。海外のリソースにアクセスするとかですかね。あとは、英語を勉強するかな。英語が話せるだけで選択肢が増えますからね。

 

最後に、大学生に対してメッセージをお願いします!

 

小村:「自分がこの社会を変える」という確信を持ってほしいです。今後はますます不確実な社会、そして知識社会に移っていくと思います。昔の工業化社会では大量生産をしないといけなかったら、マネジメントが大切でした。誰かが決めたフレームの中で、言われたことをちゃんとやることが重要視される社会だったんです。そういう社会の中にいると、自分が「全体の歯車の一つ」という感覚が作られてしまって、自己効力感が下がってしまう。「自分なんて」って思っちゃうんですよね。日本の場合は、そこからアップデートされないままになっているから、僕も含めてなんですけど、そういう思いを持つ若者が多いのかなと思います。でも、今後来たりうる知識社会は創造性を発揮しないといけない、枠組みがない世界だと思います。それってつまり宇宙みたいなもの。宇宙はどこにでもあって、枠がないからどこだって中心になり得ます。ということは、誰だってこの世界の中心になり得るし、この世界を変えることができるんです。だから、限界を自分で決めずに、「自分がこの社会を変えるんだ」という確信を持って、日々ワクワクしながら楽しく過ごして欲しいと思います。

 

 

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