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「考え続けること、その姿勢が大事」小村隆祐 -前編-

今回はベンチャーカフェ東京の小村隆祐さんをお招きし、組織やリーダーシップについてお話を伺いました。

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ーまずは自己紹介をお願いします。

 

小村:改めてはじめまして。今日はよろしくお願いします。ベンチャーカフェ東京というボストン発のイノベーションコミュニティでプログラムティレクターとして働いている小村隆祐です。基本的には毎週木曜日のThursday Gathering というプログラムを企画しています。

 

ー本日は前半と後半に分けて、前半は小村さん自身について、後半は仕事に関して深堀りしたいと思います。まずは、高校生から大学生までに焦点をあてて行きたいと思います。小村さんは大学生の時、どのようなことをしていましたか?

 

小村:私はファッションショーや音楽イベントなどを企画するサークルに入って、代表をしていました。一年生のときは学内で活動をしていたのですが、二年生になったときは、戦略や方針を変えて外部で大規模に活動しようということで、他大学とコラボをしたり、大学の公認を得たりしました。

 

ーなにかトラブルや壁はなかったんですか?

 

小村:ありましたね。今考えると自己承認欲求だと思うんですけど、当時は自分がやりたいことを自分でやっていました。でもそれに仲間がついてこない。全て自分でやってしまって、お互いにフラストレーションを溜め大きな溝を作ってしまっていました。

 

小村:独りよがりではなくチームで何かを成し遂げるためには、皆の意見もうまく吸収しながら何をしたいのかを共有していくことが大事なんですけど、当時の自分はそれができていませんでした。でも結果的に自分のリーダーシップスタイルについて大きな学びを得る機会だったと思っています。

 

ー今もリーダーシップについて考えていると伺いましたが具体的にはどういったものに変わったのですか?

 

小村:結論から言うと、正直まだ変わっていません。ただ、理想は「適切な場を作る」ということですね。強い組織って、そこに所属しているメンバー全員が120%の力で活躍していて、かつ組織としても調和があるんですよね。そのためには、ビジョンみたいな物が明確に共有されていて、それぞれがそれを落としみ、やりたいと思っている、そういう状況を作らないといけない。

 

小村:つまり、命令しなくても勝手に阿吽の呼吸で、それぞれが何をやるべきか理解し躍動している、そん な状況を実現できる場を作るのがある種のリーダーシップだと自分は思っています。それをリーダーシップって呼んでいいのかはわからないけど。そういう世界観を持った分散的分権的な構造を持つ組織って、各メンバーが力を発揮していると思います。

 

小村:自分がそれがまだできていないなと思うのは、自分のやりたいことをあまりに追求しすぎてしまうから。俺はこう思う、って意見するのはいいけど、ホントはそれはそうだけど、これはこうした方がいいんじゃない、みたいにもっと柔軟になるべきなんですよね。

 

ー具体的にどうやってディスカッションをよりよいものにしようとしていますか?

 

小村:リスペクトしようとか、言いたいことは言いましょうとか、意見には耳を傾けようとか、グラウンドルールを決めることはシンプルなことだけど、すごく大事だと思います。トラブルがあった時にそこに立ち返れるようにしておく。松下幸之助さんの金魚の話っていうのがあるんですけど、すごく的を得てると思うので紹介しますね。

 

「金魚を飼うのに、金魚そのものを考えるだけではあかんわね。水を考えんとね。金魚ばかり考えて、水を軽視したら、金魚、すぐ死んでしまうがな」

 

小村:ここでいう金魚がコミュニケーションだとするならば、水がグラウンドルールだと思うんです。コミュニケーションを図るなら、前提にあるグラウンドルールとか、一歩下がったところでのルールにも目を光らせるべきなんですね。例えばベンチャーカフェでいうとミッションやコミュニティクレドっていうのがあって、そもそもこの団体はなんのために存在していてどんな規範を大切にしているのかってことを明示するようにしてます。

 

ーWHYの部分がしっかりしてる団体ですね。

 

小村:ベンチャーカフェ東京っていう組織自体は、人材育成・組織開発という点でいうと、バブソン大学の准教授がエグゼクティブディレクターという形でいます。私の同僚も同じ大学出身だし、それ以外の人たちもみんな非常にリベラルで、組織がどうあるべきかを教養として学んできた人たちが多いので、ある種お手本通りというか、教科書通りにやってる印象があります。WHYはすごく大切にしています。

 

小村:ベンチャー・カフェ東京を運営するにあたって、意思決定を様々なところでしていかないといけないじゃないですか。その度にいわゆるバリュー、ミッション、ビジョンを常に明確にして、俺らはこういうことをしていて、こういう場作りをしようとしているんだけど、これでいいんだっけ?という具合に原点に戻れるようにしています。

 

ー団体としてのあり方はすこしわかった気がするんですが、リーダーシップっていうのはどうやって学べると思いますか?そこまでたどり着けると思いますか?

 

小村:自分にもできる、社会の人々に影響を与えられると確信することだと思います。どうやったら学べるか、そもそもリーダーシップ・リーダーって一体何なのか?という話になるけど、ピーター・ドラッカーは、リーダーの唯一の定義は、「それに付き従う人がいること」と言ったんですね。そこから一体どんな示唆を受けるかって話なんですけど、一つは「誰にでもなれる」ってことだと思います。リーダーっていうとサークルのトップとか、会社のマネージャーとか思いガチじゃないですか、部下がいないとダメなんじゃないか、とか。でもそうじゃないんですよね。役職とかじゃなくて、自分にもなれるし自分ができるという確信が大事な第一歩だと思います。

 

ーやっぱりリーダーっていうのはフォロワーがいて、でもその中にもいろんな性質があると思うんですね。先ほど仰っていた分散型においても個人それぞれがリーダーシップを発揮することが可能ですし。僕の場合リーダーの性質って、人と人をつなげるそれを集合体として1たす1を3にするような形で合わないであろう二人をつなげるのりだなと思ってるんですね、。そのように考えたときに、小村さんのリーダーとしての性質ってなんだと思いますか。

 

小村:ベクトルを見せる方向付けをしないといけないのかなと思います。組織って何を成そうとしていることがしているワケじゃないですか。どの方向に向かっていきたいのか、その方向性を指し示し、促すといったことをするからこそ繋がるんだと思います。

 

小村:僕も自分がしたいことは、できるだけビジュアルに言うように意識してます。

それで共感してもらえれば一緒にやれるし、共感されなかったらみんなの意見を聞いてみんなで作っていけばいい、そんな感じだと思います。

 

小村:だからやっぱり方向付けをする、つなげるというのはすごく大事だと思います。ただ、自分が指し示すだけ出なく、みんなで作っていこう、というのも大切ですね。

 

ー意識が高い人たちで周りをかこめ、という起業家の方もいますし、やはり環境って大切ですよね。

 

小村:よく孟母三遷とかっていうけど、それってつまり社会関係資本の話ですよね。

 

小村:高みを目指す方がいいと思うけど、でもいきなり高みに行こうと思わない方がいいです、いけないので。自分も若い時そうだったんだけど、例えばスティーブジョブスになりたいとか思っても、そもそも違うわってなって、ガッカリし諦めちゃうみたいに。目指したところにたどり着くには、やっぱりステップを踏む必要があって、それでいちいち一喜一憂していても意味がないんですね。

 

小村:資本の蓄積も一緒です。人に興味を持ってもらおうと思うと、何か持ってないとダメですね、社会関係資本でも人的資本でも知識でも人脈でも。でもこれもまたいきなりたまらないわけです。資本って蓄積するものだので、大事なのはいかにステップを戦略的に踏んでいくかだと思います。

 

小村:自分も明確に将来こうなっていたいと言う思いがある方ではなくて、その場その場、偶然に偶然が重なった感があるんですよね。実は僕就活失敗したり、マンチェスター大学に留学しても体調不良で一年くらいで帰国してしまったり、結果的にあんまり興味のなかったITの会社に入ることになり、最初はすごくキャリア変えたいなと思っていました。他の人と比較して焦燥感を感じて、自分もピカピカしたいと思ったけど、やっぱりそこからいきなりピカピカは無理なんですね。

 

小村:でも留学しよう、バブソン大学にいこう、MBA取ろう、そうやって資本をためて、そういう知識経験人脈が自分のブランドになって。自分の持ってる物が増えてできることも増えて、グロービスに行っても得られる物が多くて、そう言うのが全部蓄積しての今だと思います。

 

小村:だから、何もできてないからガッカリする、って言うのは必要ないです。その上でできることからやっていって、自分の資本とかケイパビリティを拡充して選択肢を増やしていく、一足飛びで行こうとしないのが大事です。

 

ーやりたいことがわからない、見つからないって学生も多いと思うのですが、小村さんは自分で知ってましたか?

 

小村:今もまだ考えています。でも、就職活動に失敗した経験ってすごく悔しい思いをしたある種の挫折で、ターニングポイントでもあったと思います。

 

小村:今考えてみると、自分の就活のやり方って、会社ランキングとかを見て、それに基づいて自分の大学だとギリギリ行けるかな、みたいに勝手に決めてしまっていたなと思うんですね。なんとなく自分が好きそうな分野とかはあったけど、本当に自分がやりたいことに目を向けていたかと言うと決してそうではなくて、敷かれたレールの中でできる範囲での最適解を求めようとしていました。杓子定規の中就活をしている自分がいたなと。

 

小村:そんなにやりたいことがわかっている人って思っているよりそんなにいないし、すぐ出てくる物でもない。心配する必要はないと思います。むしろ大事なのは考え続けることだと思います。LIFEGOESON、自分は進化していくしやりたいこともどんどん変わる物なので、大きな出来事の後とか、モヤモヤが残った時に、問い続けて考える。そういう姿勢の方が大事だと僕は思います。

 

ー成功ってなんですか?

 

小村:AMBIDEXTERITYって言葉があるように、「両利き」になることが大事だと思ってます。みんなが躍動できる方がいいよねって言ってるけど、理想を語りすぎてお金を稼げなかったらそれは続かないですよね。つまり、これからの時代は理想と現実の両方を見る、考えるということが必要になってきます。

 

小村:基本的にイノベーションの世界って二律背反を乗り越えることだと思ってます。

例えばユニクロユニクロの安くていい服を作るって言うのはまさに二律背反なんです。

いい物は基本高いじゃないですか、でもその二律背反を、デザインをシンプルにして長い期間売れるようにすることでコストを下げて乗り越えてるんです。

 

小村:さっきもいったことにも繋がるんですけど、これからは自分で新しい価値を生み出すことに意味がある知識社会になります。でも工業社会も残る。つまり、どっちかではなく、併せ持つこと、 a or b じゃなくて、a and b then create c のスタンスが大事な訳です。

 

後編に続く