ENTREP

「次世代のリーダーを育てる教授」キム・アレン -後編-

 

未来のリーダーとしての学生】

 

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ICUの教授として、今回のパンデミックで教育の意味や価値は変わったと思いますか?

 

大学の意味は変わっていないと思います。私たちは今、オンライン教育が行われている、これまでとは違った環境に置かれています。そんな中で私たちは、いかにメリットを最大化し、それに伴うデメリットを減らすか、ということに焦点を当てています。私たちが行っているリベラルアーツ教育の目的は、あらゆるタイプの人間の探究心の基盤となる知性を養うことです。将来に備え、当たり前を疑うといった必要不可欠な批判的思考力を学生に教えようとしています。名門大学が数多くある日本には、優秀な学生が多くいる一方で、その人数は減少傾向にあり、大学はより少ない母数から生徒を集めなければなりません。ただ、学生に多くの機会を提供するICUは将来の複雑な状況に立ち向かう準備を可能にするリベラルアーツ教育の先頭に立ち、長い間このような取り組みを続けてきたため、とても有利な立場にあると思います。ICU生の多くが、今後確実にやってくる急速な変化を受け入れる準備ができていないのではないかと私は思います。

 

起業家精神は教養教育の一環であるべきだと思いますか?

 

そうですね。リベラルアーツ教育は問題を「どのように」解決するかを考えるだけでなく、「どの」問題を「なぜ」解決するのかを問う訓練であり、同時にリーダーシップを発揮し、奉仕する人生を歩むための準備でもあります。リベラルアーツ教育では、様々な学問を横断し課題やアイデア、方法を探究したり、世界中の問題に対して討論をして解決策を提供したりしなければなりませんが、それこそが企業家精神なのではないかと思います。

 

つまり、企業家精神の定義は単に「会社を立ち上げること」だけではなく、課題を発見し、それを解決することなのです。

 

どんな事業も人間のニーズを満たすサービスや商品を提供しています。リベラルアーツ教育はそのように物事の繋がりを捉えることができる、持続可能性をめぐる重大な問題に取り組むことができる、未来のリーダーになるための教育であり、これこそが起業家精神と教育との関係です。私はICU生に将来リーダーになって欲しいからこそ、この企業家精神を促進しようとしています。昨年12月、ENTREPでは、元googleのディレクターの方をお招きして、学生たちがどのようにこの分野を体験し、理解しているのか、事例を紹介していただきました。このように、教育とビジネスは、将来的には相互に深い関わりを持つようになっていくと思います。そのため学生は、様々な人がどんな課題を見つけ、どんなイノベーションを起こし、そしてどんなチャンスを掴んでいるのか、知る必要があります。

 

━学生が最も身につけるべきスキルは何だと思いますか?

 

共感、この一言に尽きます。共感とは、人が何を求めてるのか、何を必要としているかを問うこと、知ることで、これは成功した起業家や教師、私の母に共通する特徴です。他人の感情を理解し共有する能力こそが共感力という必要不可欠なスキルなのです。

  

この能力を通して、誰かに自分の考えを共有したり、感謝の気持ちや人への関心を示すことができます。励ましたり、支えたりすることだってできます。この「共感」というものには台本はありませんが、これらはすべての成功の基礎となるスキルです。新しいサービスや製品を提供する時、ユーザーが製品やサービスに何を求め、何を感じているのかを理解していなければ、その起業家は100%失敗するでしょう。だからエンドユーザーが何を求めているのかを理解する必要があるのです。結局のところ、私が尊敬するのはそういう共感力が高い人なのです。

 

成功の定義】

 

━あなたにとって成功って何ですか?

  

神様が与えてくださった才能を全うすることだと思います。人があなたを誇りに思うのは、あなたが自分自身、満足している時です。神様が喜ばれるのは、あなたが人生における希望と光を見つけた時です。あなたが本当に幸せを感じるのは、自分の才能を開花させ、他を助け、世界を良い場所にしようとする時です。こういった幸せこそが、成功への鍵なのです。あなたが築き上げたものや、稼いできたお金の量ではなく、あなたが与える社会への良い影響、それが根本的に成功に結びついており、成功、お金、全てに繋がるのです。

 

同時に、あなたがこの世を去るとき後世に何を残すか、これも成功の定義において考慮すべきことです。私たちは、マザーテレサやスティージョブズ、他にも亡くなった人を今でも称賛したり、思ったりします。彼らがこの世に存在していたからこそ、世界は今より良い場所になっている。間接的ではありますが、成功ってこういうことなのではないかと思います。

 

━教授として、あなたは今「成功」していると思いますか。

 

いいえ。私は毎日成功するために努力をしていますし、決して現状に満足していません。私ができること、貢献できることは、まだまだたくさんあると思っています。例えば、私はENTREPの皆さんと協力して、第一回目のイベントを主催しましたよね。私はあのような場、機会が必要だと思っていましたし、学生の皆さんもそれに対しての熱、エネルギーを持っていました。頭が良く、国際的な広い視野を持っている人は、社会にプラスの変化をもたらす人材になるべきだと思いますし、自分がやってきたことに満足している人は、それ以降イノベーションで起こせないでしょう。そういう意味では、満足せず、常にゴールに向かって邁進しているつもりです。

 

止まらず常に動き続けたり、太陽の沈む瞬間を追ったりするじゃないですか。まさにそれが今の私だと思います。命は本当に素敵なプレゼントであり宝物だと思います。自分自身だけではなく、差別されていたり迫害されていたり、経済的格差に苦しんでいる人たち、そう言った人たちに何を与えられるか。誰かの問題解決を少しでも手伝いたい、これは私が大学教授に感じるやりがいでもあります。自分の声や行動が世界をよくできればと思うし、あなたたちも成功して欲しいなと思います。成功したらぜひ素敵なレストランで神戸牛を御馳走してくださいね(笑)

  

ありがとうございました!