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「やらなければ一生心に残ってしまう夢だったから」森本萌乃 -後編-

【起業のきっかけは金曜ロードショー!?】

 

━FABRIC TOKYOに契約社員として転職された時はまだ起業は考えていなかったということですか?

 

森本)自分で何かをやってみたいという気持ちはあったんですけど、できるわけないって思ってました。だから、自分のリソースを使い果たしてしまわないように余力を残すための隙間を作って、自分が本当にやりたいことと向き合おう、って思ってましたね。

 

━MISSION ROMANTICのアイデアはどのようにして生まれたんですか?

 

森本)その時に恋人が欲しいなと思っていて、マッチングアプリを使っていたんですけど、人の見た目や学歴で判断してスワイプしている自分が、ものすごく嫌だったんです。こんな楽して勝手に人を善し悪しつけて、私は何様なんだろうって(笑)。そんなときに金曜ロードショーで『耳をすませば』を観たんです。号泣しました。本というプロダクトを通じて出会った2人の障壁はお互いの夢っていう一連のストーリーに感動して、私はスペックや顔で選ぶんじゃゃなくて、自分ではコントロールできないようなところで出会いたいんだなって気づかされたんです。それで、『耳をすませば』みたいな出会いを実現させるサービスを作ろうと思って、MISSION ROMANTICを始めることにしました。

 

金曜ロードショーがきっかけだったんですね。起業の準備は順調に進みましたか?

 

森本)当初はスタートアップでやろうと思っていたので、まずはチームを集めてサービス開発を始めました。でも、これをどうやったらマネタイズできるかってことばかり考えているうちに、全然私の好きな分野のことを考えられなくなってたんですよね。集まってもらったチームには「このままだと良いサービスが作れる自信がないので」と言って頭を下げて、一旦解散してもらいました。本当に失礼な話なのですが...当時のメンバーは素敵な方ばかりで、こんな私を今も気にかけてくださったりと感謝してもしきれないです。

 

森本)チームを一旦解散した後、それならいっそ自腹で全部やろうと思って。とりあえず自分でできることをやりました。ウェブサイトを作ったり、電通の同期にサービスを体験してもらってフィードバックをもらったり。そんなふうにやってるうちに、そっちの方が自分らしかったと気づきました。FABRIC TOKYOの仕事も全力で頑張りつつ、自分のビジネスには水曜日や休日問わずとことん向き合えて、もはや仕事ではなく人生だと感じてました。お金は飛ぶし、友達と遊ぶ時間もなかったんですけど、すごく幸せでした。

 

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【それは、やらなければ一生心に残ってしまうような夢なのか?】

 

━起業を準備する過程で、諦めようと思ったことはありませんでしたか?

 

森本)ないですね。私の場合やらないっていう選択肢はないので、まずは世の中に出してみようと思ってました。自分が本当に信じて出してみて失敗したら、それは多分私がそのサービスや起業に向いてないってことだと思うので。

 

森本)あと、このサービスを作ること自体が私にとって助けになってます。今の私にとってこのサービスを作ることが仕事であり人生であり恋なので。起業する時に思ったのが、起業と結婚って似てるなって。役所に行ったり、書類を作成したり、全部自分でやったんですけど、その時に婚姻届ってこうやって出すんだなって勝手に思ったんです。私はROMANTICと婚姻届を出したので、幸せにしてあげないといけない、という一家の主人感を勝手に持っています(笑)

 

━起業に興味があっても一歩踏み出せないでいる人に対して、森本さんはどんなアドバイスをしますか?

 

森本)まず、人に会うなって言いますね。人に会うと影響されちゃうから。それよりも、その夢はこの世界に自分一人しかいなくてもやりたいのかをしっかり自分と向き合って考えた方がいいです。私が好きな本で『アルケミスト』っていう羊飼が主人公の本があるんです。ある日羊飼が夢を抱いて旅に出ようとするんですけど、残って羊たちの世話を続けるべきか悩むんですね。そしてその羊飼は「僕が旅に出たら、羊たちはやがて僕のことを忘れてしまうだろう。僕がここに残ったら、僕の夢はずっと心の中に残り続けるだろう」と考えて旅に出るんです。この本にすごく影響を受けて、やらなかったら一生心に残っちゃうくらいの願いかどうかを自分と向き合って考えようって思いました。それで、他のものが全部なくなったとしても私はMISSION ROMANTICをやりたい、というふうに思ったので起業しました。

 

━自分のやりたいことと真剣に向き合って初めて、その先に起業やそれ以外の選択肢が見えてくるんですね。

 

森本)そうですね、起業じゃなくてもいいと思います。起業家という肩書きを求めるんじゃなくて、自分がどれだけやりたいことをやれるか、ということに向き合った方がいいと思います。あと、人生一度きり!なんてロックンロールな発想じゃなくて(笑)、今の時代は人生をパラレルで2つ同時に描けるということを知っておくと良いと思います。夢なんか変わるし、前より転職もしやすくなってきてるので。私は PR とマーケティングをここまでずっとやってきたので、その能力が鈍らないようにがんばりつつ、会社を自分で持つことでマネタイズと経営のスキルも身につけようと思っています。どこでこの二つのスキルが役に立つかはわからないんですけど、少なくとも二つあるからどちらにするかは選べる、そうしておくことが今の自分のリスクヘッジなんだと思います。

 

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【コロナを追い風に】

 

━コロナで社会に様々な影響が出ていますが、森本さんの事業にはどんな影響が出ていますか?

 

森本)今までやっていた、本を通じて出会ってディナーをするっていうサービスは中止にしています。ただ、1年間やってきた中で少しずつ口コミが広がってお客さんが増えてきたので、これまでのサービスを全てオンラインで、もっと多くのお客様に楽しんでもらえるような新規サービスの開発を進めています。実はこれはコロナが来る前から考えていたんですが、コロナでオンライン対面が一気に一般化したことが追い風になってさらに開発が進んでいます。

 

━コロナ禍で将来への不安を抱える学生に対して、森本さんからアドバイスはありますか?

 

森本)多分、学生が今つらいのは自分で決められないことが多いことだと思うんですよ。試験や授業がどうなるのかって、自分に決める権限がなくて、全部大人が決めた中でやってかなきゃいけない。でも、もうすぐ社会に出るし、なんなら今もインターンとかアルバイトとか休学で社会に関わるチャンスはいくらでもある。だからこそ、今メディアとか身の回りで見かける大人のダサい行動やそれを見て感じた違和感をどうか全部鮮明に覚えていてほしいです。覚えておいて、自分はそうならないぞと密かに自分に誓ってほしい。その誓いを持った人たちがたくさん社会に出た時、未来は良い方向に向かって行くんじゃないかなと思っています。

 

 

 森本さん、ありがとうございました!

 

取材・文 井上 海南子

写真 森本さん提供

 

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